2016年2月5日金曜日

MEMJET方式のインクジェットプリンタ

また今年もJAGATのPage イベントのPage 2016に行ってきた。
ここは20年以上も前から殆ど毎年行く展示会だった。

さて、MEMJETって聞いたことがあるだろうか?
私は数年前に出会った。

大昔の上司が「和田くん、MEMJETってナニか知っているか?」と。
当時、私の守備範囲外だった。
聞いたこともないインクジェット方式だった。

そして、その元上司はOAライフの久保社長のツテで再度つながった。

ちょっと調査したらLexmarkやSamsungがこのインクヘッドを利用したプリンタを出荷しているではないか!
なんで日本で販売しないのか?

調査している間に、3つ大きな要因を発見した。
1)キヤノン・エプソンの大きな壁(業務用ではFuji ゼロックス, リコー, 沖データ)
2)価格
3)印刷品質

ここにYouTubeの映像があるから見て頂きたい。

さて、日本で普及しない理由そのNo.1
日本にはインクジェットプリンタを開発しているキヤノンとエプソンがしのぎを削る攻防戦を繰り広げている。かろうじてHPが大判プリンタとかでも入っていたし、NECやCasioにもインクジェットプリンタをOEMしていた。あと、余談だが、以前は世界最大級のコンピュータ会社(IBM)からスピンオフしたLEXMARKもあるが、やはりここも日本人にはネームバリューで受け入れられていない。一時期、LEXMARK社も日本では飛ぶ鳥を落とす勢いでガンバっていたけど・・・ここも元上司が日本法人の技術顧問をしていた。製造はF社の大連の工場だった。

では、どこがこのインクヘッド技術を使ってプリンタを作っているだろうか?
実は、独自のプロセッサーとインクヘッドなんだよ。
現在のCEOは実はQualcommの元CEO。
http://www.memjet.com/news/view/len-lauer-appointed-president-ceo-memjet

つまりSnapdragon系のCPUの設計と製造ノウハウは持っているはず。
しかし32ビットRISC CPU。そんなので大丈夫なのかって心配してしまう。
インクヘッド制御用なんだろうな。レンダリングは今ではホスト・コンピュータにやらせた方が無難だし、グラフィックボードのチップもかなり高性能だから、そのまま出力を吐かせた方が無難な気もする。

インクヘッドも実は、iPhone 6s/6s+ 用のCPUを作っている台湾のTSMCだそうだ。
ここと共同開発をしたらし。
http://www.memjet.com/about

プリンタと言えば私も開発をしていた。
レーザのメカコンとコントローラ、それもAdobe純正PSをライセンスまでする会社に15年前にいた。そしてその技術サポートまでしていた。

では売れない理由は、実は価格は業務用だから1万円とか2万円とかない。
そして日本のインクジェットはインクの消費でまかなっている市場である。
インク代が非常に高い。
インクの海賊版を作られたら(名前を出すとエコリカみたいなところ)商売が成り立たない。更に海外みたいな大容量外部タンクを用いられると、またこれも商売にならない。
従って、こう言うのは排除しようとする。
今日、平和堂さんで展示されていたマシンは13万8千円の定価だ。
ローエンドの安いヤツね。

過去のPage展示会で出展されていたのはここのリストの一部である。
http://www.memjet.com/partners/desktop

さて、品質だが、このローエンドはウゥ〜ンと思った。
このプリンタはハイエンド側だと超高速印刷が出来るのでなかなか使い勝手がよい。
とくにラベルプリンタとして最高レベルでもある。
平和堂さんは紙のメーカーだ。
ここの光沢紙でなくても使える。
しかし、フォトクオリティでもうぅ〜んと思う品質だった。
ヘッドのクリーニングと調整をすれば良いのだろうけど・・・

つまりビジネス品質ってこと。
グラフィックスや文字ならOK。

確かに60PPMを出せるので重宝する。
A6(はがき)からA4までこの13.8万円のプリンタで出力される。

実はイトーヨーカドーの社内の年賀はがきはこれを使って今年は印刷されたそうだ。
信頼性が認められたとのことだそうだ。

ただ、このMEMJETの未来は明るいと思う。
マーケットは世界中にある。
必要なのはきちんとした営業とサポート部隊。
紹介されているビデオを見ても、段ボール箱に印刷したり、並べることによってワイドフォーマットが可能であったり、利用方法はとっても広がる。
ラベルプリンタは現在数百万円しているので論外だが、このシステム構造なら小ロット多品目少生産でも勝てるビジネスが現れる。まずは日本でもこの品質と速度を見て欲しい。

さて、カラーでこれに対抗できるのが理想化学のORPHISだが、あれは高速印刷できるが、A3以上には対応出来てない。ブラザーはモノクロのみだ。

これからが楽しみだ。